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『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の謎 考察[準備編

2019年12月13日

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『エヴァ』の謎解きを再開。冒頭10分間の映像からわかることは?

シン・エヴァンゲリオン劇場版』の公開がいよいよ来年に迫った。かねてから来るべき日に備え考察を重ねてきた。おもな謎は解明してきたわけだが、いくつか不明な要素も残った。

この完結編をより深く味わい尽くすために、これまでの仮説の一部に少し修正を加えつつ、新たな説も提唱しながら、さらに考察を進めていきたい。

そんな折り、『シン・エヴァ』の本編の一部が公開された。これはなかなか驚異的な出来事といえるだろう。

今回は、その映像の内容を整理しつつ、「どんなことがわかったのか」「なにがわからなかったのか」について考察し、今後の謎解きにつなげていきたい。

なお、これから述べることは、過去の考察を前提とする。まだお読みでない方はまずはそちらをご覧ください。

icon-arrow-down 下の図は、当ブログの謎解きの核心を示す。これまで「虚構のなかの虚構」をあつかう作品について述べてきたが、それらの多くは虚構世界からの突破を図る物語だ。『シン・エヴァ』もその法則にあてはまるはずだと考えている。

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の虚構の構造(改)

当ブログは、作品のレビューにあたっては〈ネタバレ〉なしを心がけていますが、〈謎解き〉という記事の趣旨上、壮大な〈ネタバレ〉が含まれます。あらかじめご了承ください。

 

「『シン・エヴァンゲリオン劇場版』0706作戦」で冒頭の映像が公開

2019年7月6日、フランス・パリで開催されたJAPAN EXPO。そこで行なわれたイベント「Yoko TAKAHASHI×EVANGELION STAGE」において、『シン・エヴァンゲリオン劇場版 AVANT 1(冒頭10分40秒00コマ) 0706版』と題して、本編の一部が放映された。

その模様はアメリカや中国、日本でもライブ中継。会場だけでなく、LINE LIVEでも配信された。

旧劇場版の主題歌を歌う高橋洋子氏のライブ、碇シンジ役の緒方恵美氏の登壇につづき、サプライズとして総監督・庵野秀明氏のビデオメッセージが流された。なんと、そこでは「パリを舞台にしている」と発言。緒方氏が「ネタバレ!?」とツッコミを入れる場面もあった。

高橋氏、緒方氏のトークのあと、いよいよ『シン・エヴァ』のアバンが上映開始。

冒頭は、『序』『破』『Q』の名場面とセリフを小気味よい編集リズムでつなぐダイジェスト版。

そのあと、いよいよ『シン・エヴァ』の本編がはじまった。

『シン・エヴァ』の物語のはじまりは、(庵野氏が予告したとおり)フランス・パリ。そこは、『Q』で描かれた街と同様に、赤く変容(コア化)している

ヴィレのメンバーたちが「アンチL作戦*1と呼ばれる作戦の準備にかかる。

*1:これは誤りで、正確には「復元オペ」。

そこへ、エヴァとも使徒ともつかない“敵”が出現。

ヴィレは、8号機などでこれに応戦。勝利すると同時に作戦を実行する。

コア化したはずの街が一瞬でもとどおりになった

[わかったこと]『シン・エヴァ』は『Q』のつづきの物語

巷では「『シン・エヴァ』は『破』の続き(『Q』はパラレルワールド)」との説もささやかれていたが、ふつうに『Q』のつづきの物語であることがわかった(もちろん、まだ予断は許さないところではあるが)

また、ここに登場した敵は冬月が遣わしたものらしい。ネルフは依然として、このような“兵器”をつくる能力を有しているようだ。

当ブログがもっとも驚いたのは、コア化した街を一瞬にしてもとどおりにしたこと。なおかつ、その能力をヴィレが持っている点である。

『Q』において、渚カヲルが「槍がないから世界を修復できない」と騒いでいたのはなんだったのか……。

[深まる謎]『エヴァ』はメタフィクションの物語か?

当ブログが提唱する「新劇場版ではメタフィクションの世界が想定されている」という説が正しいかどうかは、このアバンだけでは判断できなかった。

しかし、気になる点は多数見受けられる。

過去の考察では、ヴンダーがピアノ線らしきものに吊り下げられていた。これを「メタフィクション」説の根拠のひとつして挙げた

icon-arrow-circle-down ヴンダーやまわりの艦隊から伸びる“線”はどこにつながっているのか?

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー

現実世界ならあり得ない光景だが、メタフィクションの世界から吊り下げられていると考えると説明がつけられる。

“ピアノ線”が、この『シン・エヴァ』のアバンでも、8号機を含め、ヴァレのあらゆる兵器につけられているのだ(しかも、マリがそのことに少し言及している。たんなる飾りではないわけだ)。

icon-arrow-circle-down 8号機の腰から“線”が伸びている。この“線”の存在を劇中の人物は認識している。

『シン・エヴァンゲリオン劇場版 AVANT 1(冒頭10分40秒00コマ) 0706版』
©カラー

さらに、『Q』では、一昔前のチープなコンピュータグラフィックのような描写が「ここがコンピュータのなかである」ことを示しているとした。

icon-arrow-circle-down “現実世界”ではあり得ないような破片。いったいどんな材質でできているのか?

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー

似たような表現が、やはり『シン・エヴァ』アバンでも見られる。

icon-arrow-circle-down テレビゲームのようなエフェクトとともに現われる“ボスキャラ”(←劇中の表現)。やはりここは仮想現実(それもゲームのなか)なのか!?

『シン・エヴァンゲリオン劇場版 AVANT 1(冒頭10分40秒00コマ) 0706版』
©カラー

そして、なによりも、コア化した街を一瞬にしてもとにもどすのは、あまりに非現実的。この世界がデータだからこそ可能なのではないか。

icon-arrow-circle-down あたかもデータが書き変わっていくように修復される街。

『シン・エヴァンゲリオン劇場版 AVANT 1(冒頭10分40秒00コマ) 0706版』
©カラー

なお〈コア化〉については、近日公開予定の「『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の謎を徹底的に解明する[準備編 その2]」で本格的に考察する(2019年7月20日追記:「特報2」の考察を「その2」としました)。

以上、ざっと『シン・エヴァ』アバンの感想をまとめてみた。このあと、あらためて映像を確認してみるつもりだ。誤りや新たな発見があった場合は、随時お知らせしていきたい。

icon-arrow-circle-down 次の考察はこちら。


『シン・エヴァ』を考察するためのメモ(随時更新)

以下は、今後考察をするための個人的なメモです。みなさんのお役に立つこともあるかもしれないと思い公開していますが、断片的なものですので、読み飛ばしていただいてもかまいません。

[2019年7月6日23:00追記]

  • 「アンチL作戦」というのは勘違い。正確には「復元オペ」というらしい。なお「アンチLシステム」という用語は出てくる。
  • “敵”は、すべてが冬月が遣わしたもの、というわけでもないかもしれない。
  • ヴィレのメンバーが操作しているのは、彼らにとって不慣れな未知のシステムであるらしい。

[2019年7月7日10:00追記]

  • コア化したパリが一瞬にしてもとどおりになる。これはおそらく『Q』でカヲルがやりたかったことなのだろう。しかし、それは実現できなかったので、「世界の修復とはこういうことですよ」と示してくれたのが、今回のアバンだったのだと思う。いわば制作陣からの「サービス! サービス!」だったわけだ。
  • 「アンチLシステム」とは、おそらく文字どおり「リリスに対抗するためのシステム」。この仮想現実を創っているコンピュータに直接はたらきかけられるモノなのではないか。『Q』では、〈リリス〉が存在していたために人類が操作することはできなかったが、『シン・エヴァ』では存在しないので、人類が「世界を修復」することが可能になっているのだろう(2019年7月11日追記:その功労者は、〈リリス〉から〈槍〉を抜いたシンジとゲンドウということになる)。
  • 「世界を修復」するシステムは、もはやオーバーテクノロジーであり、“神の所業”ともいえるが、それを操作するためのツールがオーバーテクノロジーどころか一昔前のパソコンというのも、“エヴァ”的倒錯で興味深い。
  • 過去の考察ではあまり意識していなかったが、〈リリス〉はあきらかに人類にとって“忌むべき存在”といえる。なぜなら、人類補完計画の主体となるモノだから。「ミサトさんが命がけで守ってきた」モノがじつは人類の敵だったというのは、やはり“エヴァ”的倒錯でおもしろい。カヲルが「骸」「だったもの」と揶揄的に表現していたのは、シンジにとって“敵”というニュアンスがあるのだろう。
  • 旧劇場版が「自分と他人の関係」を描いているとしたら、新劇場版では「自分と世界の関係」をテーマとしているのは、過去の考察でも述べたとおり。今回のアバンでリツコがパリという〈街〉に焦点をあてているが、これは〈世界〉(=自分が身を置いている環境)に目を向けているということで、このテーマにつながるものだ。『シン・エヴァ』は紛れもなく『序』『破』『Q』の続編であると見なせる。新劇場版で描かれているテーマは一貫しているわけだ。
  • パリの街はもとどおりになったが、人はどうなったのだろう? マヤのセリフから死んでしまっているようにも思える。ただ、新劇場版では直接的に〈死〉が描かれていない(2019年7月11日追記:ゲンドウがゼーレに語った「死をもってあなた方の魂をあるべきところへ還しましょう」が唯一〈死〉について触れたセリフかもしれない)。ここが仮想現実であることを前提とするならば、〈死〉は別の意味を持つのかも知れない。たとえば、“虚構”で死ぬと“現実”へ行くとか。『マトリックス』では“現実”へ行くことは“解放”の意味があったが、『エヴァ』では逆に“拘束”を意味するのかもしれない。だからこそ、ヴィレはこの世界にとどまるべく奮闘しているのではないか。
  • パリはコア化しているが、『Q』で描かれたように破壊はされていないようだ。エヴァみたいな巨人が融合もしていない。ここでは戦闘は起こらなかったのだろうか。
  • 戦いの相手がゲンドウではなく冬月なら、話し合いで解決できそうなのだが。「冬月副司令が私たちを試している」みたいなセリフがあることから、純粋に生死をかけた戦いというわけではなさそうだ。そもそもなぜネルフとヴィレが対立しているのか、はっきりしない。たとえば、このあと〈ゼーレ〉に対抗するための前哨戦(トレーニング)をしているとか?

[2019年7月7日16:00追記]

  • 『シン・エヴァ』は完結編であると同時に総集編のようなつくりになるのかもしれない。今回のアバンは、『破』『Q』のセルフオマージュのように思える。そうすると、『破』のような“ほのぼの日常”の要素も盛り込まれるのでは?
  • 今回の映像が「わんこ君」で終わっているから、次のカット、すなわち「AVANT 2」のファースト・シーンでシンジたちが登場するのだろう。そこで“ほのぼの日常”が繰り広げられているといったサプライズが展開してもおもしろい。たとえば、加持や大人になったトウジたちと一緒に過ごしているとか。

[2019年7月8日19:00追記]

  • “使徒もどき”が〈ロンギヌス〉を持っているとの不確定情報がある。たしかに、そのように見えるし、そうでないようにも見える。とはいえ、『エヴァ』において“〈ロンギヌス〉のように見えるモノ”は、〈ロンギヌス〉と断定してもよさそうだ。当ブログは〈槍〉に関してある仮説を立てており、この情報は仮説を証明する材料となる。そして、それによって『Q』におけるセントラルドグマの〈槍〉のすり替え問題を解くことができる。さらに、〈ファイナルインパクト〉の考察にも役立つのだ。
  • 謎の考察のためには映像を見返す必要があるが、そこは悩ましい。当ブログは通しでは2回しか視聴していない。今回のアバンは、映画館の大画面・大音響で堪能できるよう、細心の注意を払ってつくられた映像だ(劇場映画の一部なのだから当たり前だが)。小さい画面で消費してしまうのはもったいない。ピアノ線に吊り下げられた8号機がグルグル回るところなどは、映画館で観れば、観客自身が8号機に乗っているかのような浮遊感、生理的快楽が味わえるだろう。

[2019年7月9日19:00追記]

  • 今回、ヴィレは何をしようとしていたのか? エヴァの部品を集めているらしいことはわかる。だが、なんのため? 素直に考えるなら、ネルフ(ゲンドウ)が〈インパクト〉を起こすのを阻止するためだろう。冬月が送り出した“使徒もどき”は、ヴィレを足止めするためだったのかもしれない。ただ、『Q』の展開をふまえるなら、ゲンドウは〈インパクト〉を起こすための材料を手にしていないように思える。それでもヴィレ側が「ネルフが〈インパクト〉を起こす」と見なしている理由はなんだろうか?
  • 『シン・エヴァ』は、A+Bパートで「ネルフ vs ヴィレの戦い」、C+Dパートで「ネルフ+ヴィレ vs ゼーレ」の戦いが描かれると予想している(最終的にネルフとヴィレは共闘する)。Bパートのラストで、ゲンドウの〈インパクト〉が成功し、仮想現実から突破するのではないだろうか?
  • 緒方氏の話では、アフレコに臨んだキャストが、半分ほど完成しているとおぼしい映像を見て「すごい!」と言っていたと発言している。そりゃあ身内だからそう言うだろうとは思うが、あえて拡大解釈するならば、「すごい!」というのは、「いままで見たことのないようなもの」という意味だったのでは? そして、それは仮想現実を突破した際の映像なのではないだろうか。そうだとして、どんな映像なのだろう? 過去の考察でも予想しているが、そこで挙げていないものとして、『さらざんまい』のエンディングのように、実写とアニメの映像が完璧にシンクロしているようなモノかもしれない……などと勝手に妄想している。
  • ヴィレ(もしくはマリ)は、シンジたちの消息をつかめていないようだが、『Q』のラストをふまえれば、『シン・エヴァ』の開始時点で、とっくに合流していてもよさそうである。アスカたちはヴィレから逃げているわけではないのだから。「リリンが近付ける所まで移動するわよ」と発言していたことから、「リリンが近付ける所」(L結界密度の薄い場所)まで移動したところで、何者かにさらわれたのだろうか。だれがアスカたちをさらったのか? ネルフ(ゲンドウ)の可能性もあるが、その場合、『シン・エヴァ』アバンのラストにおけるマリのセリフは「奪い返してみせる」といった表現になるはずで、ネルフもヴィレもアスカたちを見失っていることが示唆されている。それこそ〈ゼーレ〉(の実行部隊)だろうか。あるいは、この期に及んで、新たな第三の組織が登場することも覚悟しておかねばなるまい。
  • マリはL結界密度の高い場所には行けないのだろうか? もし行けるなら、アスカたちを見つけられてもよさそうなのだが。「エヴァの呪縛」=「L結界への耐性」と単純に考えていたが、誤りなのかもしれない……いやだからこそ、アバンのラストで「見つけてみせる」と言っているのか(つまり、その発言はヴィレの総意ではなくマリ個人の意志ということになる)。

[2019年7月13日9:00追記]

  • リツコは「冬月副司令に試されているわね」というようなことを言うが、なぜ冬月なのか? 冬月が過去に技術的な部門を統括していた、といった描写はなかったはず。ネルフが送ってきた敵ならば、「ネルフに試されている」とか「碇指令に〜」と言ってもよさそうなのだが。リツコのなかでは、碇と冬月は微妙に立場が異なっているということかもしれない。まさか、リツコも冬月の教え子だった(だから、いろいろな事情に通じている)とでもいうのだろうか……。
  • これまでコトバでしか登場していなかった「ユーロ支部」にスポットが当たったのも興味深い。当ブログの独自の解釈では、ユーロ支部は〈ゼーレ〉と深く関係している組織だと思っている。ただ「関係」が、〈ゼーレ〉に与するものなのか対立するものなのかは慎重に検討する必要があろう。いずれにしても〈ゼーレ〉との関係が、ゲンドウ率いる“ネルフ日本本部”よりも深いから、コア化を解除できるシステム(=〈ゼーレ〉の技術)を有しているのだと思われる。
  • そのユーロ支部が武装していたのは不思議だ。なんのためだったのだろう? 劇中では、使徒との戦闘は日本でしか起こっていないような描きかただったのだが、じつは世界中のあらゆる場所に使徒は襲ってきていたのだろうか。あるいは、想像をたくましくすると、〈ゼーレ〉軍に対抗するための備えだった、という可能性もある(つまり、〈サードインパクト〉後に建造)。『シン・エヴァ』で人類vsゼーレの戦闘が描かれる際、この要塞都市が活躍するのかもしれない。
  • パリには「インフィニティのなり損ない」は発生していないようだ。日本とユーロの違いは、〈リリス〉がいるかどうか(もっといえば〈黒き月〉があるかどうか)だと考えられる。過去の考察では「人類が人工進化してエヴァみたいな巨人に変わってしまった」という可能性も考慮に入れていた。だが、実際は「インフィニティのなり損ない」は〈リリス〉または〈黒き月〉から発生したもので、人類が姿を変えたものではないようだ(もともと人間が巨大化した、と考えることに無理があったのかもしれない)。
  • 先述のように、『シン・エヴァ』はネルフ+ヴィレvsゼーレの戦いがクライマックスになると予想される。そうではなく、かりにネルフvsヴィレの戦闘に終始すると仮定すると、見た目のアクションは派手になっても、意味合いはただの身内の争いにしかならず、スケールが小さくなる。ヴィレの最終目的がゲンドウの抹殺にある、とは考えにくい。まさかミサトがゲンドウのアゴに銃口をつきつけ「悪く思わないでね(ズドン)」、などという展開になるわけではないだろう。

引用元 筆者:ぎゃふん工房

https://gyahunkoubou.com/sin-eva-mystery-1.html

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